2019年5月14日火曜日

義母を呼びつけて、夫に離婚を迫る嫁。ええ私のことです。

義母に電話をする。

「お茶を飲みに来てくれませんか?ただ飲んでいてくださればいいので」

夕方までなら構わないと義母は言った。


うちで義母にお茶をいれていると、夫が起きてきた。

もう昼過ぎであるが、いつものことである。




夫にお茶を差し出し、口をつけたところで切り出した。

「今借金いくらあるの?」


湯飲みを置いた夫が応える。

『住宅ローンが……………』




この点々は夫の台詞を省略したのではない。

言葉に詰まったのである。

我が家の住宅ローンは夫名義であるが、夫はその残高を知らない。

そもそも最初にいくら借りたのかすら知らない。

そして今聞きたいのはそんなことではない。




「住宅ローン以外は?」と問う。

誰々にいくら……とたどたどしく私の家族の名前を挙げ始めたが、それも違う。

「カードローンは借りてないの?」

その言葉に、夫は「ああそのことか」というような顔で応えた。




『借りてる』

「いくら?」

『わかんない』

義母がため息をつく。




「それは離婚に同意するということでいいのかな?」



以前土下座して離婚を懇願したとき、夫にひとつ約束を取り付けた。

今度借金したら離婚する。

念書にサインもさせた。

離婚は死んでも嫌なのだそうだ。




湯飲みを持ち上げた夫はこう言った。

『そうじゃない』

約束を忘れた訳ではない。

念書にサインしたのも覚えている。

でも離婚はしたくない。




義母の湯飲みにお茶を注いでから、私はゆっくりと言った。

「借金しないって約束は守らないし、離婚するって約束も守らない。それって話の筋通る?」

『退職金で返せる』

「だからこのままの生活を続けたいってこと?」

夫はうなずいた。




「じゃあ今後お金の管理は私がするね」


夫の顔が歪む。

「毎月決まった額をあなたの口座に送るから、A銀行に入ってるお金、B銀行に移して」

A銀行とは前職の給与口座、B銀行は住宅ローン等の生活費が引き落とされる口座である。

『全部?』と夫が怪訝そうに尋ねた。

「あなたひと月いくら必要?」

『わかんない』

「じゃあとりあえず10万円残して、それ以外は移して。今日中に必ず」




不服そうな夫の湯飲みを満たしてから続けた。

「できない?」

できないなら私も自由にする。

頭を抱えてうつむいた夫の思考が終わるのを、ゆったりと待つ。

私は体質的にお茶が飲めないので、ただじっと待つ。

義母がこちらを見やったが、少しだけ口角を上げてお茶を飲むよう視線で促した。


夫が頭を上げた。

-----------------------------------------------------

『わかった、そうする』

「それじゃあ、準備しようか」

-----------------------------------------------------

夫が風呂場へ向かう。

シャワーの音が聞こえてから、やっと義母が口を開いた。

「ごめんなさいね」

肩を落とした義母にお礼を言った。

夫がシャワーを終える前に、義母は帰った。

















二本の線で挟まれた、夫と私の最後の台詞以外はノンフィクションです。



私の脳内ではこれで上手くいくはずだったのですが、

現実の夫は離婚に合意することを選択しました。



夫が私の想定通りに動いたことなんて、今まで一度もないのに。

私はいつもそのことを忘れてしまいます。









【関連記事】

私妻だけど、夫が明日で会社を辞めるらしい。

2 件のコメント:

  1. なんだか 色々大変ですね。これからの道が明るいことを願うばかりです

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。
      光を求めて突き進んでみます。

      削除