洗濯物を取り込んでいたら、部屋の中にプーンと蚊が入ってきた。
犬が刺されては困るので、捕まえようと殺気立った。
部屋中に神経を張り巡らせた。
はずだったが、足を食われた。
正確に言えば、まだ血は吸われていなかった。私が咄嗟に手で払ったため、飛び上がってしまった。
私はただかゆく、蚊は栄養補給できず。
ルーズルーズ。
誰も得していない。
飛び上がった蚊は、隣で昼寝していた父に向かった。
最近の研究で、一度攻撃されたらその人を覚えて近づかなくなることがわかったそうだ。
父の尻にとまった。
父は寝ている。一瞬ためらったが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
平手打ちした。
父はビックリ仰天である。
「ごめん、でも仕留めたから」と言うと、グッジョブ的なうなずきの後再び眠りについた。
しばらくして
今度はあごである。もちろん父のである。
叩けない。さすがに。
叩こうとも思ったけどね、理性がね。
手で払おうとも思ったが、
すでに血を吸っている最中である。私はじっと待っていた。
父は存分に血を吸われた。
身体が重たそうに、ふらふらと飛び立つ 蚊。
ガラス戸に行く手を阻まれている。
今だ。
鮮やかな赤だった。
◇◇◇◇◇
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